◾️犯罪者の面接

 父の会社に勤めていた時期、人事権を有していた。そこで前科を持つ人間に会った。

 通常であれば書類の段階で撥ねるのだが旧帝大卒という事で部下が一次面接を通したのだ。

 自分は最初から落とすつもりだった。

 最初に証明写真を見て気分が悪くなった。調べると氏名と出身地、年齢と履歴書の空白期間で未成年者に対する強姦罪により服役していたと分かった。ありふれた氏名であり、特定出来ないと考えて応募して来たのだろう。

 

 二次面接当日、本部長・事業部長と共に彼の人物に応対した。

 身なりや表情といった外見は好青年であり大多数の人間は、その人物を「普通の人」と評するだろう。現に一次の面接官にとっては好印象。評価は高かった。しかし両眼の奥に禍々しい念を感じた。

 大学の休学期間に何をしていたのか、わざと執拗に尋ねた。事件に勘付いていると暗に相手に伝えたのだ。

 答えは曖昧に濁した内容だった。次に社是を言えるか聞くと再び有耶無耶に誤魔化す。本部長並びに事業部長へ、意志薄弱な人物と印象付け採用を避けた。

 

 その日帰宅し玄関に入ろうとすると華が「気持ち悪い人と会ったでしょ」と開口一番に声を潜めた。こちらの頭部を中心に、やや離れた場所から紋を斬り祓い出しを始めた。彼の人物の生霊といったものを祓ったのでなく、その日の夫の不快感を祓っていたのだ。

 婦女暴行に反省の色が無い様子は、実に不快だった。服役の意義を問う。